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出張グルメ 気仙沼とサンマ

出張グルメ 気仙沼とサンマ

※平成22年9月に某紙に掲載したものです。

1 気仙沼に来てはや4年目。この季節になると,週に数度はサンマが食卓に上ります。家では塩焼きで食べます。

ありがたいのは,身幅が広く,肩?のところが盛り上がっている,東海林さだおさんが言うところの体育会系のサンマ。ガスレンジ下のグリルから,ボウボウと火が出るほど脂がのっているもの。

これが細長い魚皿にのって,その銀色の皮が,ところどころ茶色く黒くなって,穴も開いているのが出てくると,私の矢も盾指数も上がるばかりにコーフンしてきます(しつこく東海林さだお風。なお「矢も盾指数」は矢も盾もたまらない場合に上昇する指数らしい。正月のおせち料理に飽きたころラーメンが出たら最高値。)。

2 このサンマの細長い形状は,デザイン的にも人の心を引くらしく,気仙沼市観光キャラクター「海の子・ほやボーヤ」は,ホヤの帽子(ヘルメット?)にホタテのベルト,そしてサンマの剣を腰に差しています。

また,我が子をとりこにした「侍戦隊シンケンジャー」のシンケンゴールドが持つ刀も,サンマを模しているのでした。

・・シンケンジャーというのは,要はゴレンジャーシリーズがまだ続いているということです。

「シンケンゴールド」に違和感を感じた方,最近は基本5色だけで戦隊が構成されるのではなく,もう2色ほど隊員が参加するようになったのです。

子供と生活しますと,こんな驚きにも当たります。

3 さて,我が家ではサンマには,だいたいポン酢をかけて食べます。

関西にいたころはサンマのはらわたなどそう食べはしなかったのですが,気仙沼のサンマの新鮮さのためか,私も苦くて味わい深いサンマのはらわたを,ほとんど食べるようになりました。

聞けば,サンマはエサを食べてからごく短時間で排泄するため,そのはらわたは,他の魚ほどのえぐみがないそうです。

ただ,このはらわたを食べる食べないなんてせせこましい話しでして,私は気仙沼のあるお店で,頭からかぶりついて骨ごと全部食べてしまう人を見て驚いたこともあります。

気仙沼の「さんま祭」では,サンマを「早く」「きれいに」食べる大会があるのですが,この人が参加したら誰もかなわないでしょう。

4 気仙沼にさんま祭りがあれば,落語「目黒のさんま」の縁で,毎年9月,東京・目黒区でも「目黒のさんま祭」が開催されています。

岩手県宮古市から提供を受ける同区さんま祭りもあるそうですが,やはり気仙沼市民としては,気仙沼港で水揚げされたサンマを提供する方の,目黒のさんま祭を応援せずにはいられません。

今年(15回目)も9月19日に開催されたのですが,不漁続きで水揚げ量は例年の半分以下。それでも前日に気仙沼港で水揚げされたばかりの5000匹ものサンマが,しかも気仙沼市民有志「焼き手」大勢と共に届けられ,ツイッターを見ると午前11時前にはすべて引き渡される,大盛況だったようです。

焼き手の皆さん,サンマの炭火焼きを,煙に燻されながらも目をゴーグルで覆って耐え,目黒の方々に振る舞われたそうです。

しかし,こんな古典落語にちなんだ催事,落語好きの私は心惹かれます。

「目黒のさんま」なんかよりもっとおもしろい噺で,B級グルメよろしく,二番煎じの催事が出てきてもおかしくはないのですが,なるほど,具体的地名と食べ物が出てくる噺って他に思いつきません。

「まんじゅう怖い」「時うどん(そば)」「酒の粕」もどこの話しか分かりませんし(「酒粕祭」では誰も来ないか。),「京の茶漬け」では当たり前すぎるし,信州に人間を溶かす「蛇含草」は生えていないでしょうし。

「愛宕山」のかわらけ投げ大会とかは楽しそうですが。

5 鯛の塩焼きもそうなのです(私は兵庫県明石市出身)が,私は,塩焼きにした魚は片面を食べた後,ひっくり返した後の方が,脂がのっていていておいしく感じます。

これを広言すると,本当に味覚蒙昧をさらすようで恥ずかしいのですが,私はウナギも天然より養殖の方がうまく感じるのですから,何の言い訳もできません。

こんな私が勧めても説得力がないのですが,サンマの塩焼きの最後には「三角」(と我が家では呼んでいる。)を食べてください。

「三角」は,サンマのあごの付け根あたり,頭部分と胴体の境目・下の方をほじくると,茶色くて弾力がある,焼き鳥のハツみたいなものがぷっくり出てきますが,それです。魚とは思えない食感で,身の部分のうま味が凝縮されていて,是非食べることを勧めたいのです。見つけられない方,私が今度,気仙沼の「福よし」か「いろり」で指導します。

この魚の身とは思えない食感,という点では,気仙沼のお寿司屋さんで出される「マンボウの腸」も,来る人に食べてもらうと驚かれます。ちょうどミノのような感触なのですが,マンボウはたまにしか取れないようなので,気仙沼でもいつでも食べられるわけではありません。

6 サンマの塩焼きだけでえらく紙幅を使いましたが,気仙沼に来てお寿司屋さんに行かれるのであれば,サンマの刺身は食べてほしいですね。

私が初めて気仙沼に来たのは平成18年9月ですが,サンマの刺身のおいしさには驚きました。

サンマの脂の味が濃く,それでいて青魚のさわやかさもあり,こんな美味しい刺身があるのかと大変感激しました。気仙沼に来る決意を固めた味だったかもしれません。

それ以来,季節が来ると,店にあればサンマの刺身ばかり注文するようになりましたが,さすがに慣れてきて,あの感激が味わえないのが残念です。

その分,特に関西から来られる人にサンマの刺身を勧めて驚いてもらっています。関西にはサンマの刺身は,まだほとんど出回っていないのです。

7 最後に,「出張グルメ」エッセイらしく,気仙沼のお店を紹介します。

【まるき食堂】(ラーメン)

気仙沼市幸町三丁目4番5号 電話 0226-23-1747

裁判所の急な坂の,下の通り(川原田通り)を下ると,河北新聞ビルに突き当たります。そこから道路を挟んで向かいに見えるラーメン屋さんです。

私の,気仙沼市内で一番好みのラーメン屋です。

「気仙沼ラーメン」とはサンマの香油を効かせたラーメンで,もちろんこのお店にもありますが,今回紹介したいのは「こく醤油ラーメン」です。

この「コク醤油ラーメン」の麺は,ストレートやや太めの黄色がかったもの。少しモソモソした感じがいいのです。

スープは名前のとおり醤油のコクのみで勝負する,黒色に近い茶色。ダシはほとんど感じません。

褒めているのかいないのかよく分からない紹介ですが,ダシやうま味ではなく,名の通りコクが感じられ,たまに食べたくなる味です。

この店では,最近出た「気仙沼ホルモンラーメン」,今話題のB級グルメ気仙沼ホルモンをみそラーメンに置いたものですが,スープが,ホルモンや味噌のえぐみも濃厚で美味しいですよ。

※まるき食堂は,震災後,移転しました。「気仙沼ホルモンラーメン」現在ありません。

2013年05月11日

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